さて。ホテルニューアカオで散々遊び倒して、あとは帰るだけである。だがまあせっかく熱海まで来たのだから、少し観光でもしていくかと、熱海駅に荷物を預けて観光をすることに。(前回、ホテルニューアカオの旅行記はこちからどうぞ!)

といっても、東京都民にとって熱海は電車ですぐそば。なんなら日帰りで来られる、箱根に並ぶ手軽な観光地。当然、来るのは初めてではない。熱海銀座や熱海城、秘宝館、来宮神社などのメジャーな観光地には大体行ったことがあるわけで。(そして酒飲みは大体、来宮神社で「酒難よけ」のお守りを買ってくる)
今回は駅前からもう少し奥の、行ったことないおすすめエリアを散歩してみようと思う。

商店街を抜けて、酒の匂いに釣られてフラフラと。
あちこちにちょっと昼から一杯できそうな、いい飲み屋がたくさんあった。熱海に来るとつい宿食にしてしまうし、人目を憚るような事情のある旅行も多かったので、外食や外飲みの選択肢を選んでこなかったことが悔やまれる。健全な旅行なら、こんなに楽しめるのか、熱海。次は素泊まりでもいいかもしれない。

重苦しい雲が垂れ込める、曇り空の下。なんだか少しずつ、寂しい通りに迷い込んできた。なんだか訳アリっぽいカップルが、俯き加減にすれ違っていく。

そしてたどり着いたのが源泉・熱海七湯のひとつ、『小沢(こさわ)の湯』
別名『平左兵衛の湯』とも呼ぶ。吹き出す温泉の蒸気で、温泉卵を作ることができる無料施設。曇った日に見る源泉の蒸気は、どこか物哀しい温泉情緒を感じさせるな。
愛する男を忘れられないまま、親の勧めで別の男と結婚した美しくも悲しい人妻。不満もないがどうしても心からは愛せない夫の朝食用に、ここで温泉卵を蒸しながら、昔の男を思い返す。彼は今、無実の罪で服役中だ。檻の中は冬は寒くなかろうか、そんなことを思いながら女はそっと蒸し上がった卵をひとつ頬張る。一見つるんと無垢な白身の、その奥から溶け出す、舌を焼くほど熱くドロっとした黄身の食感は、まるで己の心の内と業の深さを表しているかのようだと、ひとり自嘲しながら…。
と、いうような情景が目に浮かぶ。つまりここでは、半熟の温泉卵はこの女の中に渦巻く愛欲のメタファーなのである。俺小説家になろうかな。

卵は持参してもいいし、目の前にある『天神酒店』で1個(30円)から購入することも可能。個包装の塩(10円)も売ってるよ。そしてもちろん、酒屋さんなので酒も売っている。観光がてら、お酒と共に卵を買うのがおすすめ。

蓋を開けるとこんな感じ。蒸気は90度以上あるということなので、気をつけよう。

卵をセットして…。

蓋をして待つこと6〜8分。固茹でなら10分とのことだが、季節やタイミングにもよるらしいのでまあ適当に。天神酒店で買ってきた、静岡麦酒でも飲みながら待ちましょう。
さっきの小説の続きを考えるか。服役中の男が出所してきて、この街に現れて女をかっさらっていくべきか、それとも2人は2度と出会わない方が、情感が出るだろうか。間をとって、男はここにやってくるものの、夫と一緒にいる女の姿を見て何も言わずそっと立ち去る、なんていうのもいいかもしれない。

くだらないことばかり考えていたら時間を測るのを忘れていた。もういい気がする。

少しゆるいが結構上手くできたんじゃなかろうか。塩をかけて、いただきまーす!

うーん、静岡麦酒と、温泉情緒たっぷりな熱海の源泉・小沢の湯で蒸し揚げた温泉卵が合わないわけもなく。悲しい人妻の心の内を表現したかのような、複雑で滋味深い味わいだ。明るく陽気な食卓にも、ちょっと切ない世界観にも、どちらにもよく合うのが静岡麦酒のいいところ。本日の街歩き観光は、ここをゴールとする。
ちなみにホテルニューアカオのTシャツを着て熱海の街を闊歩すると「俺はホテルニューアカオに行ってきたんだぞ!」と謎にドヤりたくなるのでおすすめだ。ぜひホテルニューアカオ帰りには熱海観光をどうぞ。
その際は小沢の湯と天神酒店に寄って、俺の考えた恋愛小説「熱海で蒸し上がる愛欲のメタファー」を読みながら卵が蒸し上がるのを待っていると良い。鋭意執筆中。
施設情報
| 施設名 | 熱海七湯 小沢の湯 |
| 住所 | 静岡県熱海市銀座町14-14(天神酒店前) |
| アクセス | 熱海駅から徒歩15分 |
| SNS・サイト | 熱海公式観光サイト |
| その他の情報 | 入浴はできません |
※データは全て取材時のものです











