みんなは初恋、というものを憶えているだろうか。
ゲイの俺の、初恋の相手はテレビ画面の中の人だった。
和服に身を包み、赤茶色の長髪を束ねて、頬には十字の傷跡のある男。口癖は「おろ?」で、腰から日本刀をぶら下げていたけれど、それは逆刃刀(さかばとう)と呼ばれる、殺傷能力のない不思議な刀だ。
彼の正体は、かつての伝説の人斬り。
幕末の世に暗躍した凄腕の剣豪だった彼の手は多くの人間の血に濡れていたが、そんな己の行いを悔い、今後は決して人を殺めないことを誓い、刃のない刀で悪党どもを生かしたままけちょんけちょんにのしてしまうのだ。自らの大切な人々を守るために。
いい男すぎる。本当に本当に俺はその男が好きだった。

夏が終わり秋へと季節が移ろいゆく、そんな季節。恋、という言葉もまだ知らなかった幼き日の追憶に浸りたくもなる。
いわし雲と、初恋の思い出はいつも綺麗だ。いつも綺麗だが、それだけではお腹が空くので、何か食べようと思いながら巣鴨・地蔵通り商店街を歩いていると、見えてきました。
ときわ食堂 庚申塚店
巣鴨みんなのご飯やさんだ。

秋の空にはいわし雲が流れるが、この食堂では「生さんま塩焼き定食」が流通し始めたようだ。

地蔵通りにはもう1軒、とげぬき地蔵のある高岩寺近くに参拝客・観光客で賑わう同店の「本店」があるが、商店街外れにある庚申塚店はどちらかといえば地元の皆さんがご飯を食べたり、1杯やりに来ている印象。



主に海鮮系に定評がある店。特に立派なエビフライは名物で、ロゴにも使われている。
酒を飲むなら単品をアテにするのもいいし、ガッツリ飯を食いたいなら全メニュー追加370円で定食にすることも可能。
店員さんは若い学生風の子達が多い。全方位に多感な年頃であろう彼らと、「初恋」とは何ぞやと、ゆっくり語らいたくなる秋の夕暮れ。

ちなみに米は俺の1番好きな、新潟の「つきあかり」
優しい感じがする味と食感でお気に入り。家でもよく炊くよ。
ちなみに定食のご飯は、1杯おかわり無料。

とりあえず、赤星大瓶で乾杯。俺の初恋の男もそういえば、赤い袴をいつも着ていたな。

アジフライはミニ盛りの1尾で注文。和ガラシがついて来るのがいいね。

まずはカラシ、次はソース、さらに醤油…と、ひと口ごとに味を変えていくのが飛天・俺流。

サンマももちろん単品で注文できる。
秋の刀の魚と書いてサンマ。そのソリッドな姿は、なるほど彼の携えていた逆刃刀にもよく似ている。











